薔薇だって書けるよ・日曜日に自殺・遠い日のBOY・晴田の反抗・オリジンマイラブシリーズを収録した茫洋さと鮮烈さを内包する恋愛短編集。
薔薇だって書けるよ
可憐な少女・点子にひと目ぼれした青年・八朔は、熱烈なプロポーズの末結婚。しかし甘い新婚生活に陰りが見えはじめる。16歳の妻を迎えた青年だが妻は社会的通念に乏しいことがわかり社会的信用を失う一歩手前にまで事態は深刻化する。夫の好きだけどそれだけではともに歩めないジレンマと憔悴、どこまでも純粋で純朴な言動の妻。
別れることを決めた直前に夫が妻の本質を知り得たのでハッピーエンドになったけど、良かったと思う反面もやっともする。夫が妻の本質を見出せねばどうなっていたかと。人生において努力とかも必要だけど自分を見出してくれる相手に出会える運てのがけっこう重要なんだよなとしみじみ思う話でした。縁と呼ぶこともあるそれは僥倖。
遠い日のBOY
飴屋の妹は未来人と名乗る青年と軒先を隔てて語る。主人公は朴訥な学士の婚約者がおり、一見女っ気は少ないけど婚約者に対してはしっかり乙女。器用な姉と学士がいるところにもやっとしたりそんな自分に落ち込んでみたり。心情描写はさりげなくリアル。しかし未来人の設定はよくわからなかった・・・。
オリジン・オブ・マイラブ
とある4人の男女の学生から大人になるまでのとある時期のエピソードと各々の心情を描いた短編連作。くまを持って告白する少年とその男友達、くまを持った少年に告白を受ける少女と女の親友。実はこういう人間関係でしたというオチがせつなくも秀逸。
晴田の反抗
えーと、恋愛ものなんかな。天真爛漫な男性と男性が好きな主人公。まっすぐな気質も度をすぎれば毒、みたいな。主人公の心情と行動が痛々しくもせつなかった。
日曜日に自殺
自殺して伝説になろうとしたバンドのボーカル。死後の天使の手続きの後出会ったのはバンドのファンの少女。いい意味で思春期の青くささと純粋さとどこか懐かしさを感じた1作。
どの作品もモノローグや台詞に文学的な叙情を感じるところがツボでした。著者は高い感性を持っているんだろうなと思われ。
売野機子 / 白泉社全1巻
ジャンル:女性・恋愛・ドラマ / 好み度:★★★☆☆
タイトルを見ると某TVCMを思い出すなあ・・・。