地球を旅立ち不毛の惑星に不時着した人類の子孫たちが生きる砂と無法の世界。人間台風の異名を持つ平和主義者のスゴ腕のガンマン・ヴァッシュ・ザ・スタンビートの物語。
人が生きていく中で生じる矛盾や軋轢という難しいテーマを鮮やかに描いた作品です。主人公ヴァッシュの生き様は、たとえ自分の生命に危機があろうとも殺人を全面否定するという考えの象徴であり、牧師ウルフウッドは罪と認めつつも生きるための殺人の肯定を意味するものであり、ナイブズは人の愚かさを、人は進んではいけない道を、黙々と語りつづけている存在のような気がします。痛々しいまでの彼らの葛藤は、本当は目をそむけず常に考えなければならないことなのです。
重く深いテーマを持つ作品ですが、エンターテイメントの観点から見てもかなり質の高い作品です。見せ方が上手いと言うべきでしょうか。戦闘時以外のなにげない会話は軽快で楽しい気分になりますし、派手で迫力のあるガンアクションの構図は緻密に計算されたように感じます。そしてなによりキャラクターの感情描写が圧巻です。
徳間書店で「トライガン」を連載していましたが掲載雑誌休刊に伴い、続シリーズとして「トライガンマキシマム」を少年画報社で発表されました。物語が佳境に入ってくるとアクションばかりでちょっと心が折れそうになりましたがラストは感慨深いものでした。作者らしい終わり方というべきか。
内藤泰弘
ヤングキングコミックスNEO/少年画報社
トライガン全２巻 / トライガンマキシマム全14巻
ジャンル：アクション・ドラマ・青年 / 好み度：★★★★★