昭和29年、神戸。引きこもりの青年は謎の人物「テツオ」により幽霊塔と呼ばれる時計塔に眠るという財宝を巡る謎に巻き込まれる。2年前の奇怪な事件を基軸とした策謀に金も仕事も持たない引きこもりの青年がコマとして使われる巻き込まれミステリ、なのかな。
一応の主人公は停滞した現状においてもプライドや趣味は一人前にある、そして持たざる者の純粋さもある青年。主人公と同世代と思しき端正な顔の謎の人物「テツオ」が主人公に近づく。主人公が一度身の危険を感じた場所でもあるいわくつきの時計塔とその中に眠る財宝の話を持ちかけられ、金や人間関係から危険だと感じつつも話に乗る流れ。
テツオは少年かと思ったら実は少女で性別も名前も偽っていることが後々わかる。そしてテツオが傾倒しているある人物の指図により動いていることも。
謎が謎をというミステリと、生々しくもリアルな人間描写が見所。江戸川乱歩を思い出す猟奇と倒錯とミステリが混在した話、という印象。絵柄もレトロな舞台設定のイメージにぴったりで読み応えがある。
えーと日本のミステリ小説が原作かと思ったら翻訳小説で大元は外国の著者の作品だそうで。かなりアレンジされているらしいので別物と見たほうがいいみたい?
乃木坂太郎 / 幽麗塔 ~黒岩涙香「幽霊塔」より~
ビッグコミックスペリオール全9巻 / 小学館
ジャンル:青年・ミステリ / 好み度:★★★☆☆