山に囲まれたすり鉢状の地形から、テレビ・ラジオなどの電波がほとんど届かず、唯一文化的な施設はビデオレンタル屋という土地。主人公は受験生の中学三年生だけど勉強ができない男の子。友達である、村以外を拒絶する男子と快楽主義の女子と何も起こらない平穏な日々をすごしていた。
そんな平穏な日々を憂い時折流れる流星を見る主人公だったがある日その流星が目の前に落ちてきた。それはX型の謎の物体だった。
未知なる物体が、時が止まったような村に進入してきたことによる様々な人間の反応と、それをきっかけに起こる出来事。
Xが何か変化をもたらすのではないかと望む者、閉塞した現状から飛び出したい者、殻の中で安息を求める者などの心情や行動を通して描かれるその時代の雰囲気が、斬新な切り口で描かれています。
著者のデビュー作だそうで。ポップというか絵本の挿絵でもいけそうな可愛らしいキャラ系の絵柄なのに話はかなりシビア。センスの高い、いわゆる芸術系な演出や構成という印象を受けますが、何も無い田舎の若者たちの話とするならばその中身はリアリティのある内容だったりするわけで。主人公たる中学生たちもそうですが教師や店員とかの台詞にもそれを感じるけど。
ラストの展開は、寂寥と同時にそこはかとなく懐かしさを覚えました。
帯などは「ちょっと前の時代ってこんな空気だったんだよ」みたいなコピーがついていますが、やっぱり違ってるのかなあ。
西島大介
Jコレクション全１巻 / ハヤカワ文庫全１巻 / 早川書房
ジャンル：SF・ドラマ・青年 / 好み度：★★★★☆
あの有名アニメ映画でも前後でかなり演出が違うのは時代の移り変わりをあらわしているのか、とふと思ったり。