イヌナキ 石川優吾

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犬と人との絆とその情景を描いたオムニパス。
周囲から取り残されたような古い一軒家の老夫婦の元に、やってくる娘と孫。老いた夫はボケてきているのかいまはいないはずの過去に飼った犬のために自分の食べ残しを犬の器に盛り庭に置き、過去の飼い犬たちは庭にやってくる。夢か現か、やってくる犬は本物か別の犬か、その辺はあいまいにしつつも、歴代の犬と暮らした日々を紡ぎつつ今現在の生活のドラマも描き、という内容が1番目のエピソード。そのほか、ヨボヨボで死にかけのような風貌だが不思議な運を呼ぶ犬の話や著者自身の飼い犬たちの話など。
各々独立した話で構成されるオムニパス形式だが、1エピソードに割とページ数をかけてじっくりと描かれている。いや詰め込みすぎずゆうるりと描いているからそう感じるのかも知れないが。
著者の飼い犬たちのエッセイを読むに、スタンスというか構成はフィクションのものというか以前の著作と似ている。以前の著作にも感じ取れたが、著者は犬など人に飼われている動物に対する情感が深いのかなと思ったりも。
感動というにはさっぱりというか淡々とした、静謐で情緒的な描写。著作であるカッパの飼い方とか子泣きじじいの飼い方が好きな人にはツボかと。

石川優吾
ヤングジャンプコミックス改全2巻 / 集英社
ジャンル:青年・ドラマ / 好み度:★★★★☆