朝がまたくるから 羅川真里茂


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「罪」をテーマにした深遠なヒューマンドラマ3篇「葦の穂綿」「半夏生」「冬霞」を収録した作品集。
著者の濃い人間ドラマは深いけど欝な気持ちにならないのは、主要人物がみな潔い人間だからだろうな。あと読後感がいいというか、それなりに解決した〆だからというのもあるかな。
「葦の穂綿」
20歳の鈴は一人の青年に恋をした。青年には触れてはならない過去の秘密があった。鈴にも罪悪感がありその他者のために犯した罪は自分も守りたい者も貶めた。内情を知らない人間にとっては罪びとは疎外するべき存在なのか。この話を読むと無責任な報道の弊害を思い出します。青年の罪の秘密を知ることになる、鈴にも罪悪感がありその解決も描かれています。踏まれるとすぐに地に着く弱さでも時間をかければ伸び上がる葦の穂のように生きてほしい。本編後のキャラの説明を見て、そういうことかと納得した私;
「半夏生」
女性カメラマンと女装男子。カメラマンは男子と撮りたいという望み、男子は女性の姿になりたいという望みが一致し、女性の姿になった男子を女性カメラマンは撮る。撮影シーンはふと葛飾北斎の女体と蛸を思い出した。一見エロティックなんだけどその本質は純粋な芸術の衝動、みたいな。
社会通念的な罪もあるけど、むしろ当人たちの心情の中にある罪が主題なんだろうな。
「冬霞」
育児放棄された幼い双子は突然現れた青年と共に北に逃げる。彼らの逃避行はある意味正しい家族愛であろうと「心に滲みる」話でした。ちょっとサスペンスな構成なのも興味深かったです。ラストの女性職員(?)の言葉は少なからずインパクトがありました。実際の職員でこういう台詞を言える人は少ないだろうという偏ったイメージはある(汗)

羅川真里茂
花とゆめコミックススペシャル全1巻 / 白泉社
ジャンル:少女・ドラマ / 好み度:★★★★☆