ぼくと美しき弁護士の冒険 なるしまゆり

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第二次世界大戦中及び戦後に暗躍し、公安に「重要懸案事項」と記載されていたある特殊能力を持つ男・被験者Sが死亡した。Sに一度とて会うことのなかったSの実子である男子高校生は、面相の良い若い弁護士と出会い、Sの莫大な遺産があることを知る。そしてその遺産を通じて、国家機密やSの能力に注目していた他国の諜報機関が絡む事件に巻き込まれることになる。
父親が死に、その遺産を受け継ぐ唯一の遺族が主人公なのだが、登記簿と実態が違う不動産というやっかいなもので。飄々とした一見昼行灯ぽい若く面相の良い弁護士(とあと一人)と主人公が遺産の謎に迫る一方で、実父はどうも人の心を操れる力があり、主人公にも好むと好まざるとにかかわらずその力が受け継がれており公安や他国の諜報に狙われる、みたいな展開も同時に展開していく。
ちょっと少し不思議要素(いわゆる超能力)を入れたひねりのきいたミステリサスペンスといったところか。著者らしい切り口のミステリ構成と主人公たちの小気味良いやりとりや、暗躍する大人たちのシニカルなやりとりは、相変わらず魅せますね。他作品と比べてもけっこうキャラに魅力があるような気がします。
ミステリ部分は一辺倒な構成ではないので読み手によっては若干とっつきにくいかもしれないかなあ。徐々に全容がわかる仕組みにはなっていると思いますが。表題が昭和時代の横溝とか乱歩あたりの耽美かつ怪奇風味なミステリの題名っぽくて良いですね。実際現代ものだけど戦中~戦後絡みな話だし。ただ美しき弁護士っていうフレーズには・・美しいというよりハンサム系な印象のキャラデザなので違和感を覚えずにはいられなかったけど(笑)

なるしまゆり
KC×(ITAN)全3巻 / 講談社
ジャンル:少女・ミステリ / 好み度:★★★★★