小さな海辺の町。この町に惹かれ赴任してきた中学校の理科の女性教諭をはじめとしてこの町に関わる人々の物語の連なり。
1エピソード完結の連作形式のノスタルジックな雰囲気の人間ドラマ。日本海に面した小さな潮騒の町が舞台。田舎の町の暮らしの描写ではなく町に住む人間の物語を切り取った話。
住む人がいなくなった古屋を借り住んでいる中学の理科の女性教諭が主人公。かつてこの町に訪れたことがありこの町が気に入り赴任してきたという。清楚なタイプのいわゆる理系女性、どこか茫洋で浮世離れした雰囲気と突飛な行動。まあその行動はきちんと理由あってのことなのですが。主人公の設定から物語の中に理系薀蓄がさりげに盛り込まれているのも特徴か。そういえば理科と一口に言っても科学、化学、生物、地学、物理とけっこう様々な分野があったっけと思い出した(笑)
話の構造としては、主人公の視点のみで展開しておらず、各々のエピソードに主格となる人物は別にいて、主人公はその人物と交流することもあればちょい役でのみ登場することもあり、という主人公は物語の主題の見届け役の立ち位置。
町に惹かれ外からやってきた主人公、町に生まれ育ち外に出た人間の思い、主人公に懸想する同僚、町に生まれずっと暮らす老人の思い出、どの話もさりげない静謐な空気の中各々の人間のドラマをさらりと描いています。
板倉梓
芳文社コミックス全2巻 / 芳文社
ジャンル:青年・ドラマ / 好み度:★★★★☆