ゲイであることを周りに隠している警官のケインはマンハッタン、クリストファー・ストリートで金髪の美少年メルと出会う......。
ケインとメルのドラマを通してアメリカのゲイの人々を取り巻く環境や問題、差別と理解、そして社会が生み出すひずみを克明に描いた物語。禁断の愛情をただ表現するだけでなく、その枠を越えた人間ドラマが展開されています。
前半は、他人と違う自分の苦悩と葛藤、カミングアウト後の周囲の反応、家族の理解、エイズの問題といったゲイの人たちが自分を貫くために乗り越えなければならないものを。後半は猟奇殺人やそれに至る原因である家庭内の虐待といった題材が扱われています。後半のエピソードはアクションよりも人間ドラマ重視で、特に犯人(罪を犯す者)の心理描写が鮮明に描かれているのが印象的でした。ラストのエピソードは、ゲイの人の年老いてからの生活の一例が描かれていて、個人的に実に興味深かったです。私が読んだことのある同性愛を扱った作品が、登場人物が若い頃のみの内容ばかりだったせいかも知れません。
羅川真里茂
白泉社文庫全2巻/白泉社
ジャンル:少女・ヒューマンドラマ / 好み度:★★★★★