バビロンまで何マイル? 川原泉

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普通の高校生・仁希と友里は、子供の頃に助けた地の精霊ノームから不思議な指輪をもらう。その指輪には光ると所有者を他の時代へ飛ばしてしまうという力があった。しかも光るタイミングはランダム、飛ばされる時代もランダムという困りもの。指輪のきまぐれで始まる彼女たちの冒険を描いた作品。
少なからず歴史に興味を持つ者にとってはこれ以上にないシチュエーションとはいえ、どちらの時代に飛ばされた場合でも彼女たちは現状に嘆くよりも先に進み、その中で楽しみさえ見出すというたくましさを持っています。ノームに出会ってから現在に至る家庭の経緯、それに伴う彼女たち自身の変化の描写がそれを裏打ちしているようです。設定的にはいろんな時代を巡る...というパターンなのですが、実際描かれたのは、恐竜時代とルネッサンス時代のみでした。恐竜時代は設定の説明を兼ねた前振り的役割を担い、ルネッサンス時代はボルシア家という素材を通して歴史のうねる波の中にいる人の情念を描いたエピソードです。ルネッサンス時代は特にかなり丁寧に時代背景が説明されており、まったく知らない人でもわかりやすくなっていると思います。個人的にはこの作品の解釈が一番しっくりきました。歴史の当事者や状況を客観的に観る主人公二人。作者独自のキャラクター故にこの歴史モノとしては禁じ手とも呼べる手法にも嫌味がありません。
ラストがちょっと雑だったせいか、もっと続く予定だったのでは...と思ってしまいます。掲載雑誌の都合でキリのいいところでとりあえず終了というパターンだったのかも。

川原泉
白泉社文庫/全1巻/白泉社
ジャンル:歴史・ファンタジー・少女 / 好み度:★★★★★