三十路の男と幼女はパパと娘と呼び合い父は娘に振り回されつつ可愛がる、よくある父子家庭のほのぼのとした日常・・・なのだが。
30のやもめで引きこもりな青年は、傷を負いベランダに放置された幼女を暴行目的で攫う。そしていざ組み伏せたとき幼女は男をパパと呼び、その瞬間男の中に父性が目覚める。
誘拐から始まる擬似家族もの。既存のドラマなどのような虐待を受けた幼女を憐れみから誘拐ではなくそれを超えて、性的暴行の目的で拉致したこどもの擬似父親になるという始まり。
はじまりはハードですが未遂だし以後は男は憑き物が落ちたように良き新米パパなキャラになっています。歪んだ形ではあるものの互いが互いを必要とし良き関係を築く彼ら。いきなり子持ちになった男をいぶかしむ幼馴染の警官の女性や1巻末で登場するガチ光源氏計画のホンモノのおっさんなどの存在、2人の関係におけるどうしようもない事実などが、ありふれた父子家庭の光景をほのぼのハートフルでなく、ブラックでシュールでがけっぷちにいるような切ない空気を纏わせています。シュール系ポップな絵柄がまたタイトルの雰囲気を盛り上げているかんじ。
幼女の年の割りには聡明な部分が見え隠れし表情が乏しいというか表情が読み取りにくいキャラデザゆえか、最初に男を父と呼んだ瞬間や男との暮らしの中での心理とか真意とかをぐるぐる想像してしまう。
ふたを開けてみればどんでん返しに次ぐどんでん返し、よくできたサスペンスでミステリでコメディドラマでした。
小路啓之
ジャンプ・コミックス デラックス1~ / 集英社
ジャンル:青年・家族ドラマ / 好み度:★★★★☆
おおむね読み応えがあったんんだけどラストの妹さんのところがちょっともやっとする終わり方だったなあ。