2週間のアバンチュール・ヒメコちゃん・彼の左目・チーズトースト考・Belgian waffleを収録した短編集。
鶏肉倶楽部はなんとなく芸術系な印象が強かったですがこちらの短編集はリアルというか生っぽいというか。
表題の2週間のアバンチュールは南仏編と修道院編2編の短編。天使の名を持つ少女アンジュとある少女の話。
南仏編は林間学校のようなイベントが舞台。アンジュと同室になった少女・ローズは、自分は愛らしく他者から特別扱いされることと当然としているタイプで、自分の嫌いなレーズンを親切顔でアンジェに渡したり馬鹿にしたり。そんな彼女に対しアンジェは、少女嗜好を持ちローズに懸想する大学生の講師を唆す。修道院編では少女マリー・ルーが初潮を向かえたときともにいたアンジュが、自分の身に未だないその変化に興味を持ち言葉巧みにマリーをだまし彼女の体を調べるという話。マリー・ルーはローズとは真逆、精神は純朴で肉体が先に成長したタイプ。対称的でもあり類似でもある2編の展開が印象的でした。まあ修道院編のほうが百合っぽいのかなあ。
アンジュは成熟したおとなの狡猾さを持っているキャラかと思ったけどこどもの無知による無邪気さからの行動ともとれるのか。彼女の残酷さは少女らしくもあり女性らしくもあり。
ヒメコちゃんは、性転換したヒメコちゃん(菊池くん)と、おそらくは性転換のきっかけになった高校時代の同級生・堀田の話。高校時代の同級生5人で出かけた温泉旅行で、菊池くんは性転換しヒメコちゃんになっていた。高校時代、まだ男の子だった菊池と堀田との過去の出来事を描きつつ、掘田が同伴した彼女との女の戦いを交えつつ、ゆるだらな展開に。菊池は思春期の純粋だったときのあの行為の思い出を美化し続けていたのか心のひっかかりになっていたのか。掘田と一戦交えてみたヒメコの感想が肝か。当時は特別だったりすることも時間がたつと変化しちゃうってのはままある。まあ現在幸せそうだし良かった良かった。ちょいコメディなオチが心憎い。
彼の左目はばら色の頬の頃の番外編。本編の過去編のさらに番外編なのでそちらを読んだほうがいいのかも。まあまったくわからないでもないですが。嫁さんの静かに狂っていく様が怖かった。
チーズトースト考は、喫茶店のメニューチーズトーストの考察。トースト男爵の過去が明らかに(笑)オチが悲しかった。
中村明日美子
Fxコミックス全1巻 / 太田出版
ジャンル:青年 / 好み度:★★★★☆