主人公の高校生長十郎は物事に淡白で喜怒哀楽が薄い茫洋とした少年。そんな彼が学校の裏山で不思議な老人から木の鉢を譲り受け学校に持ち込んだことから物語は始まる。そしてその木の根元の土の中に埋まっていたのは手のひらサイズの小さな小さな女の子「こいし」。どうも彼女は鉢の木の妖精で、その木に実る実に三日三晩、こいしが願いを込め、願いを持つ人間が実を食べると願いがかなうという。
はじめから主人公の名を知り不可思議な存在であるこいしをあっさり受け入れる主人公とさまざまな反応を示す友人たち。そしてこの不思議な木と妖精を巡り周囲が騒がしくなっていくという流れ。
こいしが恩返しとして主人公の願いをかなえることを望む理由、主人公は普段淡白な気質だが大事なものの執着はすさまじい理由、幼馴染の女の子がこいしを警戒し主人公を案じる本当の理由など謎を含めつつ、妖精と主人公と周囲の人間によるドラマが展開されていきます。
一見ほのぼのなのですが、各々抱えているものはかなりシビアなようでその有体を垣間見せるドラマ構成。かわいくいじらしい中に切なさと苦しさを内包した人物描写が見所。不思議な魅力がある話だと思いますが、独特の雰囲気があるのも確かで読み手を選ぶタイプか。そういや橙星と似たような人物配置だなあ。
個人的には興味深く読めたのですが、オールファンタジーな舞台設定ではぼやかせるだろうけど現代設定ゆえにきっちりしておかない部分があり、その過程描写が回り道的でちょっとテンポの悪さを感じたり。こいしの処遇に二転三転してるからか主題に入りこみにくかったのですよ。
群青
バーズコミックスガールズコレクション全2巻 / 幻冬舎
ジャンル:少女・ファンタジー・学園 / 好み度:★★★★☆