とある伝承にあるという謎の石版を手にしたごく普通の大学生ナオヤ。その石版は誰でも1つだけ命令できる力を彼に与えそれをきっかけに彼の世界は一変する。サトリ能力にまつわるサイコホラーアクション。
民俗学専攻のごく普通の大学生は、ひょんなことからある伝承を知り、昔の馴染みの場所にあった石版を得る。しかしその石版は触れた相手の心を読み1つだけ命令することができるという能力を持ち主に与えることがわかる。その直後、主人公とその恋人は、石版を狙う宗教団体や狂った男を頭とするヤクザから追われることになる。
息をつく暇もなく次々と石版を求める来訪者が襲来してくる展開。その中で主人公も力の使い方がわかってくるものの、人格者でも冷徹でもない精神が練れていない、いろんな意味で「普通」の青年はその状況に右往左往し、石版の力に振り回され孤立していく。
唯一のこころの支えは恋人を守るということだけだが、逃避行における主人公の行動は恋人に不信感を植え付ける結果となり主人公はそれに苛立つという負のスパイラル状態。あがけばあがくほど沼にゆっくりと沈んでいく感覚を思わせます。
石版を追う者たちもマッドな面々がかり、絵柄もインパクトが強いサイコホラーぴったりで。特に主人公のマイナスの感情とシンクロしたようなネジクレタ奇怪な画がより臨場感を出しているような。
鬱というかじっとうずくまって嘆き消えたくなりそうな心情でも、直接的な生命の危機に直面するとやはり生存本能が働き生きながらえるという身もふたもない状況の描写が印象的でした。
ずっとジェットコースター的展開になるのかなあ。冒頭で主人公と接触し、時間を置いて主人公たちの味方、というかつるんできたヤクザの情人の女性が停滞した主人公と恋人の関係のカンフル剤になりそう?
田中一行
アフタヌーンKC2巻 / 講談社
ジャンル:青年・サイコアクション / 好み度:★★★☆☆