母はおらず酒飲みの父親と貧乏暮らし、身の不幸は仕方がないとあきらめ日々をすごしていた少女。ひょんなことから富豪の奔放な跡取り息子と主人公の少女の顔が良く似ていることがわかる。その後、件の跡取り息子は気ままに出奔、父が自分を身売りしようとしたことから家を飛び出だしてよるべのない状態の主人公は、身代わりとして拾われるという展開。
出奔した息子を好いているであろうお付の人間の主人公に向ける態度、異母兄弟たちの画策、秘密がばれないかというあやうさ。それまでとは真逆の恵まれた環境ながら、そこは決して幸福の園ではなく、とはいえ主人公にとっては幸福とはいいがたいが不幸ばかりでもないという、せつないというか、泣き笑いの表情を思い起こさせる雰囲気というかなタイトル。
ゆらりゆらりとゆっくり事態が過ぎていくこの独特な話運びとたゆたうような心情描写は絶妙。
山中ヒコ
KC×ARIA全4巻 / 講談社
ジャンル:少女・ドラマ / 好み度:★★★★☆