少年・八軒勇吾は都市部の進学校に通っていたが進む道や家庭のことなどで迷走していた。そして外部に出ることを決め、担任から薦めで農業高校に進学する。周囲は実家が畜産や農家だったり獣医など将来の目的が明確な学生ばかりで目的がない自分と比べたりアウェイ感を強く感じ悶々としたりしつつも、学校内の出会いや状況にもまれ徐々に成長していくという流れ。驚きの連続の毎日の中で繰り広げられる農業高校青春物語といったところか。
実際、著者が北海道の農業高校出身なだけあり学園生活や座学・実習の描写はさりげなくも現実味があります。農業・酪農と無縁だった主人公の心のツッコミというかカルチャーショック?の描写には共感をしつつ。
食のこと、命のことといったおそらくは著者の作品における永遠のテーマを軸に、登場人物たちの様々な心情や向かう方向の描写など見所要素がてんこもり。様々な事情を持つ登場人物たちながら、なんのかんのと真っ直ぐなところが見ていて気持ちが良し。
主題は現実味のある、地に足の着いた内容ながら、わいわい騒いだり議論したり諍いや和解など人物同士のやりとりのテンポの良さと、リアリティだけを追求したガチガチな内容ではなく適度に漫画らしいコミカルさとフィクションを織り交ぜて読み手を飽きさせない構成になっているところが見事。
正直なところ、鋼に比べ地味な話だろうし好みの傾向として学園ものははまれない場合が多いので期待していなかったのですが真逆でした。面白いし引き込まれる。著者は著者だよなあと実感というか(えらそうですいません)
荒川弘
少年サンデーコミックス1~ / 小学館
ジャンル:少年・学園 / 好み度:★★★★★
サンデーらしかぬという意見を良く見かけるけどある一定年代以上にとってはむしろサンデーらしい作品と言えるんですよね。あ、かつてのという形容詞?がつくか。