親友夫婦の忘れ形見である少女を引き取ることになった独身男性。14歳と35歳、ひとつ屋根の下で暮らすにあたり、彼らは家族であるための取り決めを提示する。擬似家族とメインとしたドラマ。
三十路で独身青年の主人公が、親友夫婦の忘れ形見である十代の少女を引き取るという擬似家族ドラマ。この手の設定だと萌え系統のほうが昨今多い気もしますがこちらは少々シビアかつリアルな設定と話運びになっているかな。
親友夫婦とは夫婦が婚姻を結ぶ以前から親密な間柄だったけれど、夫婦のうち妻が死亡した後主人公はその家族と疎遠になっていた。その後夫も死ぬが父娘の関係は良好ではなく主人公が娘に出会った際、娘は感情が欠落したような状態だった。そんな少女に主人公がうちに来るかと誘うと少女は見る見る活気を取り戻す。
とはいえ娘には祖父母という血縁者たちがおり主人公が引き取るにあたりすったもんだがありながら、少女の意向を重視し主人公と少女は家族となるというはじまり。ちなみにそのすったもんだの解決策の1つとして主人公の後輩で彼に仕事を回す立ち位置にある女性を仮初の婚約者として据え、この女性も物語の重要なファクターとなるという構成。
血縁でないがゆえの家族のルールを取り決め暮らす二人の話、仮初の婚約者たる自立心の強い女性との関係の話、親友夫婦への感情もろもろ、恋愛に家族愛にと読ませる人間ドラマに仕上がっている印象。
少女は当初主人公に好意はあるけどあくまで家族としてというかんじだったので少女との家族ドラマであり女性との恋愛ドラマ化と思っていたけれど、男性の他者に対する心持ちの描写と少女と同居することから訪れる変化が物語のメインのよう。
親友夫婦、仮の婚約者、そして少女。男性の彼らとの過去と現在の関係、他者に対して臆病なところがありその気質から引き出される事柄と当人の心情描写が印象的でした。
著者の人間ドラマは恋愛にしろ家族ものにしろ同様の話とはベクトルが独特なんですよね。著者にしか描けないものが確立しているというか。そこが好みなわけですが。陸乃名義なので艶描写もけっこうあったりしますがこちらはドラマ重視でそちらは押さえ気味かな。結末はやっぱりこう〆るかあ。まあハッピーエンドとしては自然な流れというかおさまるとこにおさまったかというかんじ。
陸乃家鴨
芳文社コミックス全2巻 / 芳文社
ジャンル:青年・ドラマ / 好み度:★★★★★