あさりよしとお短篇集 毒入り <カプセル篇> あさりよしとお

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著者の単行本化されていなかった短編・中篇を収録した作品集。タイトル通り、著者らしいエッジの効いた風刺かつシュールな内容。「メッチェンファウスト」「世界冥作劇場」「プロジェクトT」「それゆけ内田くん」を収録。

「メッチェンファウスト」
主人公は電波というかちょっち脳が温まっているような少女。朝起きてみると、一次運動野における体部位局在の地図(脳の中のこびとって言うの?)のようなものが頭に張り付いていた。これによって平和を守る魔法少女になれたと喜ぶが。
その頭にくっついたのは人類以外の知的生命体で主人公を操ろうとしてたけどどうも逆に主人公に同化しちゃったかんじ。その辺は詳しく描かれておらず、主人公と同じく人間に取り付いた生命体の説明からわかります。生命体の力で主人公は飛びぬけた腕力を得るけど体力は通常で、敵を殴ると骨が折れるといった具合。超常能力を出せるのではなく「火事場の馬鹿力」を引き出すようで、そのため肉体が限界を超えて壊れるということのよう。つっても痛覚がないから当人はけろりとしたものだけど。
話のバックボーンは、人類に成り代わろうとする生命体と人類の戦いのようですが、戦闘方法とか敵の設定とか見るにつけエヴァのパロディぽい(こちらが先に発表されてたらごめん)。
変身して異生命体を撃退してきた一族の生徒会長と主人公のからみとかそこはかとなく恋愛ネタとか魔女っ子な要素もあったり。著者の話なのでやっぱりずれてますけどね。不良のタイマン形式ってのは笑えるなあ。
主人公の百葉箱に例えた自分の「なりたいもの」の台詞は含蓄がありました。

「世界冥作劇場」
こちらはタイトル通り毒がたっぷり含まれた名作劇場パロディシリーズ。オランダの犬とか肉食動物と7匹の草食動物とか赤毛の少女とかがモチーフになっています。
寓話や名作のブラックパロティは数あれど(つーか童話はそのまんまブラックだけど)ここまで直球なのはさすがというべきか。身も蓋もないというかなんというか。まんまブラックジョークもあり、風刺とか、現実にあったことの逆手をとった設定とかもあり。
特に狼と7匹の~のパロディが印象的でした。ほぼ元ネタと変わらないのにこのブラックさ。言われてみれば・・こうなるよなあと思うと同時に風評からあらぬ疑惑をかけられるというのは現実でもありそうだよな・・と。

「プロジェクトT」
豆腐屋の息子が主人公の車漫画のパロディ。こちらは戦車でバトルをやってますよ。無茶ですね。無駄に絵が明快です(笑)薀蓄はさっぱりですが笑えました。オチはまあ・・そうなるわな。

「それゆけ内田くん」
童話の世界を舞台に、人体模型の内田くんが活躍するお話。人体模型なので表情がないのに雄弁でそのギャップが面白いけどやっぱり怖い(笑)えーと、人体模型ってアレもあるんですか。知らなかった。

あさりよしとお
リュウコミックス全1巻 / 徳間書店
ジャンル:青年・ブラックコメディ / 好み度:★★★★★