パノラマ島綺譚ほか青年漫画3件 


パノラマ島綺譚 (ビームコミックス) 丸尾 末広/江戸川 乱歩
江戸川乱歩のミステリ作品原作。ある売れない小説家は、ありとあらゆる贅を尽くした地上の楽園の創造を夢想していた。うだつの揚がらない生活の中、かつての旧友で自分に瓜二つの実業家の訃報を知り自分が彼に成り代わろうと思いつく。彼の目的は地上の楽園を築くこと。主人公の生活模様、成り代わりの画策、狂った願望が生み出した楽園の全貌、そして結末。原作の奇妙な空気感と楽園の描写はこの作画者でこそ成し得たのだろう。文章では想像しきれなかった画を堪能出来る。自分の夢想の小説が自分の夢の終わりともたらす原作小説の構成にも唸る。


サンブンノイチ(カドカワデジタルコミックス) 前田治郎, 木下半太, 品川ヒロシ
同名小説コミカライズ。実写化もしてる見たい。キャバクラの雇われ店長とボーイと常連客の3人は各々の理由で大金が必要になり3人で強盗を行いキャバクラ店内に逃げ込む。盗った金の取り分を少しでも増やすため仲間を出し抜こうと画策する展開に。その3人とは別の女性の視点があり神の目のごとく彼らの動向を見ているよう。彼女は死んだ設定のようだけどまあ物語の語り手という役どころみたい。ちなみにその女性は犯罪計画を持ちかけた人。カイジみたいなクライムサスペンス。絵とか演出もどことなく寄せてる気がするのは気のせいか。己の利益のための欺し合いが主題のよう。主題的に登場人物がすべて濃い。複数巻。


人類資金 (角川コミックス・エース) 武喜仁 , 福井晴敏
占領下時の日本の秘密資金と噂されるM資金を巡る策謀を描いた骨太な物語。主人公はM資金をネタにした架空融資の詐欺師。主人公が詐欺のネタにM資金にこだわるのは父親がM資金は存在すると告げ死亡したから。
そんな彼がある財団にアプローチされるところから話は始まる。主人公が連れてこられた財団、財団の謎のトップを探す組織、戦時下当時の資金の由来など緻密に組まれた物語の構成が見事。