白い狸 横山旬作品集 横山旬 


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白い狸・雑誌「ヨミ」・新しい戦争太古の死・1998年の風邪を収録した短編集。
白い狸
昭和29年。主人公の青年は民俗学者の助手としてある山間の村に訪れる。以前同じように学者先生と同行し行方不明となった友人の謎を探ろうとしていた青年は村に着いた早々に村に住む少女と出会う。少女と少女の親と村人、そして民俗学者。彼らと村の信仰と秘密と正体を巡るサスペンス。
雑誌「ヨミ」
ある学生が学校内でのはぐれ者的立ち位置にいる学生たちの寄稿による雑誌を制作する話。本を制作するという過程で描かれる様々なの事情や心情の描写が秀逸。完成させるまでの期待感・高揚感・進捗の焦り・作品を閲覧しての衝撃など1つ1つが印象に残る。
新しい戦争太古の死
架空の戦時下の日本が舞台。人間だけを殺す兵器におびえながら廃墟となった町のコロニーに生きる少年が主人公。彼が見るのはそんな場所の廃ビルの鉄骨の上で一日に三度歌を歌い踊る女性。舞台設定はフィクションだが、中々に現在の社会事情が加味されているなあと思った。
1998年の風邪
プラモが趣味の少年とクラスメイトの女装する少年の交流。短編の私小説のような雰囲気と構成だったように思う。

どの話も人間というものを主題にして誇張せずに真っ直ぐに描いている印象を受ける。短編古典文学のような作風。

横山旬
ビームコミックス全1巻 / エンターブレイン
ジャンル:青年・ドラマ / 好み度:★★★★☆