汚部屋住人の顛末(バンブーコミックス Qpaコレクション) 禾スパナ
表題作は、喧嘩して同棲相手が家を出てしまった汚部屋住人の青年の元に、火事で焼け出された青年が転がり込んでくる話。前の同棲相手の未練と悔恨で停滞する汚部屋住人と、生活においてまめで彼の心の隙間にゆうるりと入り込む同居人。隙間なく部屋を覆い尽くす彼なりの意味とか気怠げなモノローグ、流されていく演出など、往年の純文学を見ているような作風だなあ。理屈じゃなく感性の赴くままってかんじ。リアルだとわけわからんと一蹴する展開もこれはこれで雰囲気があって良いとなる不思議。同時収録の箱の中のあおぞらは、学生時代の同級生が再会するところから始まる話。歪んだ要素ありの金持ちの息子と和裁士という設定と今の感性だと単なる危ない人（笑）ほうたいのうみで、は自傷行為によって受をつなぎ止める攻の話。ヤンデレものといっていいのか？同時収録作品も昔の純文学ぽい内容というか作風というかだった好き嫌いが別れる作風かもしれぬ。共感性はともかく読み物として叙情的で退廃的な情緒の描写が興味深い。★★★
青い初恋ひみついろ(バンブーコミックス 麗人uno!コミックス) 風緒
青い初恋ひみついろ・ライアーズキス・花策×恋策・マイスウィートギャング・鳥籠の犬他を収録したＢＬ短編集。表題作はゲイ夫婦の息子が連れてきた彼氏は実は・・というＢＬでありゲイ家族物語といっていいのかな。主人公カップルの親は女性に代理出産を頼んで生まれたので血は繋がっている。ゲイでガチ兄弟で倫理云々で悩むけどハードル低いよねと思ってしまう私。他作人も含めキャラ同時のやりとりの手数は多く読み応えがある。絵柄は端麗なかんじ。１コマ１コマの描写がとても丁寧という印象。ただ話の最後の演出は、余韻を残すというかその後の想像が広がる質の高さも感じるものの、読み手によてはあっさりしすぎと思われるかも？と感じたり。同時収録で好きなのはライアーズキスかな。★★★
So cute? (バンブーコミックス 麗人セレクション) ユキムラ
So cute?・So what?・さよなら、ぼくらのせかい・またきてしかく・満ちて散りて他を収録したＢＬ短編集。表題作シリーズ２作は、取引先のシェフに片思いするワインディーラーの話。ワインディーラーは赤井猫のブログを持っているが、片思い相手がブログのファンであり、ディーラーばブログ主と特定されたことをきっかけに関係が密になる展開。好きすぎて躊躇するタイプの恋愛模様かな。猫が取り持つ恋愛の構成がにソツがなくほっこりする内容。他には自転車競技業界の二人とか、両親が他界し兄と兄の恋人と暮らす大学生の話とか時代劇とか。表題作はほのぼのな内容だけど他は切ない話が多かったかな。いい意味で心が締め付けられる良作だなという印象。シリアスというか切なさの描写の間合いの取り方が秀逸。★★★
