屋上エスケープほかボーイズラブ3件 


蝶よ花よ (バンブーコミックス 麗人セレクション) 紺色ルナ
表題作ほか鬼さんこちら・花と青空とナツの終わり・鬼灯の実には毒があるほかを収録した短編集。表題作は、腹違いの兄二人に偏愛されている壱葉がひょんなことから他校の生徒の瀬尾と出会い、という話。線が細く耽美というか儚げな絵柄に合う仄暗い愛情を描いた話かな。久しぶりに著者の絵を見たけど上手くなったと感じる(偉そう;)過度の庇護欲を持つ兄たちの生活しか知らなかった主人公がそれ以外の世界を知るという展開だけどそのきっかけも実は身内という純文学かみたいな話だった。BLというよりジュネに近く、ある種の郷愁を感じる。他作品もおおむねシリアスというかドロドロな粘着ぽい内容。著者は似た作風が多いけどこちらの作品集が一番雰囲気が好みだった。★★


不埒なジョーカー (バンブーコミックス 麗人uno!コミックス) 畔ミチ
ベビージョーカー・深い事情のその理由は・秘めた事情のその理由は・瞬きより早く・専属主従・目隠しが条件などを収録した短編集。表紙のふたりに話は、宅配ピザのヘビーユーザーの青年とピザ屋の雇われ店長の話。配達がきっかけで家にも入るほど親しくなっていきという展開。あとは日本の奇祭オタクの非常勤教師と悪魔な同僚の話、上流社会の主従BLなど様々。ストーリー展開としては奇を衒わずそれなりにリアリティのある話が多め。カップルのやりとり描写がメインかなあ。H展開は強引系や甘々系など多彩。★★


屋上エスケープ (バンブーコミックス 麗人セレクション)  北別府ニカ
屋上エスケープ・安藤はママの味。・前略、山田泰生様。・後生だから・パパじゃないから・彼はご機嫌ナナメ・とうとい他を収録した短編集。表題作は、自分がゲイなのに自暴自棄になり屋上で自殺一歩手前の高校生に着ぐるみ青年が話し相手になる・・というはじまり。青春の1頁的な展開に時間の流れの描写が印象的。あとは報われない10年の恋が実る話、告白してきた相手は始めから好きだったのだがヘタレで・・な話、ゲイの相方を期待したがノンケばかりで落胆した主人公だがお仲間と出会う話、大好きな若い父親は実は親じゃなくて息子にガチに懸想しているカミングアウト話などなど。尺が短いながらどの話もBL定番一辺倒ではなく、物語としての起伏や緩急がきちんと作られていて読み応えがあった。短編映画としても使えそうな構成というべきか。さりげない物語の作り方が上手い。★★